「有難う。
 紀天、私と妹の昔話を聞いてちょうだい。

 
 昔、私と葵桜秋は、怜皇さんをめぐって恋に落ちたの。
 玲皇さんはお祖父様【おじいさま】の交わした遺言による私の婚約者。

 だけど当時の私は、恋に前向きに慣れなくていつも自分に自信がなくて。

 何かあると輝いて見えた、妹の葵桜秋にすべて任せてた。
 私たちは一卵性の双子で、そっくりだったから。

 そうやって怜皇さんを騙してるうちに、神様が罰を与えたの。

 妹の……葵桜秋のお腹に、怜皇さんの赤ちゃんが宿った。
 世間体を気にして、その日から妹は咲空良になって私は葵桜秋になった。

 妹が結婚した後に、私の妊娠してることがわかった。
 それが尊夜。

 全てを知って紀天と睦樹さん、そして心【しずか】は私を家族に迎え入れてくれた。

 生まれてくる尊夜と一緒に、5人で新しい家族になろうって。

 だけど生まれてすぐに、病院から尊夜は居なくなった。

 出生届だけは役所に届け出ることは出来たけど、
 その日から一度もあったことはない。

 妹とも……葵桜秋とも、その日からあっていない。
 そして怜皇さんとも。

 退院して1ヶ月ほどして、怜皇さんの名前で私と睦樹さん宛に、二人の赤ちゃんの写真が届いたの。
 その裏に書かれていた名前が、瑠璃垣伊吹と瑠璃垣志穏。

 今も尊夜は見つからない」



車内で告げられた真実の秘め事にオレは言葉を失った。


泣きながら涙に声を詰まらせて告げた咲空良さんを、
親父はゆっくりと運転席から手を伸ばして慰める。



聞かされた真実は、オレだけの問題じゃない。




今、オレが知りたいのは……アイツ。


オレの知る、瑠璃垣伊吹がこの全てを
知っているのかどうかってこと?