「紀天……おはよ。
お待たせ」
なんかまともに、アイツの顔が見れなくて
少し照れ隠しに俯く。
「おっおぉ、準備できたか?
んじゃ、行くか」
紀天も紀天で、私がどんな服着てても
そんなの関係ないとでも言う感じで特に触れる事はない。
少しは何か言ってほしい気持ちと、
何も言って欲しくない気持ちが複雑に絡み合うものの
だけどやっぱり寂しい。
隣に立つアイツは、黒のスキニータイプのダメージシーンズに、
シャツを着ただけのシンプルな服装。
「んじゃ、おばさん。
晃穂、借りてきます」
「紀天くん、どうぞー。
可愛げないけど、愛想つかさないでね」
って、母さん何言ってんのよ。
愛想も何もないじゃん。
私……バカみたいじゃん。
デートだって一人で浮かれて。
アイツは私に興味なんてないんだ……。
これはデートじゃない。
ただ幼馴染が、一緒に遊びに行くだけなんだから。
チクリと痛んだ心を押し殺す。
それでも二人で出かけるそんな時間が、
私にとっては楽しみ。
楽しまなくちゃ。
アイツにとっては、一緒に遊びに行くだけでも……
私にとっては、デートって思って楽しんでもいいよね。
駅までスタスタと歩いて行くアイツを
今日は追いかける私。
恋人同士だったら、手を繋いだり腕を絡ませたりするのかな?
恐る恐る、伸ばしたくなる手を必死に
抑えて早足で追いつくとアイツの隣に肩を並べた。
もうちょっと体格も小さかったら可愛いんだろうな。
体格が良すぎる私が並べる肩は紀天とほぼ平行。
こうやってデカすぎる身長も私にはコンプレックスで。
「ほらっ、晃穂。
何やってんだよ、行くぞ」
振りむいて差し出された手。
繋いでいいの?
どうしてわかるの?
そうやってドキドキしてる鼓動の裏側、
やっぱり表の私は可愛くなくて、しぶしぶ文句を言いながらも
ちゃっかりとアイツの手を掴んでる。
電車を乗り継いで、出かけた街中。