ドキドキと高鳴る鼓動を抱きしめながら、
私は明日着ていくお洋服を選ぶ。
ひらひらとした可愛らしいスカートはやっぱり履く勇気はないけど、
だけど……せめて、チュニックだけは少し可愛らしいデザインを選ぼう。
「晃穂、入ってもいい?」
ノック音の後、お母さんの声が聞こえる。
「どうぞ。今、部屋散らかってるけど」
答えるとすぐにお母さんはドアを開けて部屋に入って来る。
「あらあら、明日、紀天君とデートなのよね?
服は決まった?」
そう言うお母さんは、少し楽しそうで。
「とりあえずこんな感じかなー」
「本当にアンタって子はどうして、華がないのかしらね。
デートに、チュニックにGパンって紀天君が可哀そうよ。
ほらっ、問答無用。
スカートは嫌がると思ったから、買わなかったけどせめて
クタクタのGパンはやめなさい」
そう言って、紙袋を手渡す。
紙袋から出てきたのは、クロップドパンツに
半袖のTシャツ。
華美になりすぎないレースも縫い付けられた前あきの長袖シャツ。
そして……オレンジ系のルージュ。
「お母さん……」
「晃穂ももう高校生。少しくらい、紀天君の為にお洒落しなきゃね。
レースのついたシャツは、腰に巻いていくと巻きスカートみたいに見えるでしょ。
さっ、早くお風呂入って寝なさい」
「うん……。有難う、お母さん」
「アナタのお母さんだもの。
でも安心したわ。ここ暫く、晃穂はずっと元気なかったから。
紀天君効果は本当に凄いのね」
そう言ってお母さんは、へやを出ていった。
翌日、9時半頃。
アイツが我が家に迎えに来た。
8時前には起きて昨日お母さんに貰った
洋服に袖を通す。
何度も髪をブラッシングして、
髪をセットしようと思うけれど、それいら今の私はどうしていいかわからない。
高校生になったら、メイクをしてる子は多くなってくるけど、
私がしたのは日焼け止めをぬるだけで、昨日貰ったルージュを握りしめたまま
鏡と睨めっこするものの、唇に塗ってはティッシュで拭うの繰り返しだった。
まだ私には似合わない気がして。
お母さんは、鏡の前で繰り返す私に溜息をついて、
ポーチの中から一つのリップスティックを手渡す。
「晃穂にはルージュはまだ早かったかな。
ならっ、リップクリームだけは塗っていきなさい。
後は爪磨きで、爪だけでも綺麗に艶を出すのよ。
メイクがしたくなくても、髪が短くても出来ることは沢山あるのよ。
晃穂は女の子なんだから。
ボーイッシュと、ガサツは違うんだからね。
晃穂は晃穂らしい可愛らしさを磨きなさい」
そんなこんなで、紀天が迎えに来る頃には
今の精一杯で、おめかしが完成してた私。