慌ててベッドに座ったままリダイヤル。
暫くの呼び出し音の後、
相手が出る気配がした。
「もしもし、咲空良さん?
電話……」
電話の向こうから聞こえるくるはずの
咲空良さんの声はなくて、ただ誰かがいる気配がした。
この場合……
「って、電話出てるの晃穂か?」
久しぶりに紡いた晃穂の名前。
「そうだけど?」
なんだよ。
その声……また強がりやがって。
「わっ、悪かったな。
合同学院祭、お前んとこ行けなくて」
「うん……そうだね」
確かに悪いのは俺だよ。
今みたいにゆとりなかったし。
けど……はっきり言うなよ。
「って、お前さぁー。
ズケズケ言いすぎだろ。
まぁ、いいけどさ。
実際問題、お前からの電話に出れなけりゃ
メールすら返信してねぇんだしな。
マジ、ごめん。
最近、どうよ?」
罪悪感が付きまとう俺は謝罪と共に、
何時もと同じ会話を繰り返す。
「別に、何時もと変わらないよ。
部活して、勉強して、帰って寝てる」
「ってお前、他には?」
「あっ、今日……睦樹おじさんと、咲空良おばさんに
ここに招待された」
「そっか……」
「うん」
離れている間の、晃穂の様子を
少しでも身近に捉えたくて。
ある意味、誘導尋問。
売り言葉に買い言葉の勢いで、
アイツは精一杯の強がりを返してくるのが
昔からの癖で……その強がりのレベルで
今の状況が何となく把握できた。
「晃穂、無理すんなよ」
「別に、むっ無理なんてしてないわよ。
ただ、体調が悪いだけだから」
体調が悪い?
紡がれた言葉に、
ズキンと心に痛みが走った。
「今週末、一度帰るよ。
オレ、今のデューティーがさ三杉竣祐さんなんだ。
光輝悧羅高等部総代に続いて、
昂燿の高等部総代の下に居るんだ。
竣祐さんが家の用事で帰るから、
途中まで便乗して帰ろうかと」
「紀天の今のデューティーは知ってた。
だって私のデューティが誰か知ってるでしょ?
紀天の行動なんて、
宝珠さまから筒抜けなんだから」