私はと言えば、睦樹おじさんに付き添われる形で自宅に入る。
着替えてる間に、話し合いを済ませたおじさんと母。


「晃穂、楽しんでらっしゃい」


お母さんはそう言って私を送り出してくれた。

これも家族ぐるみの近所付き合いの成果?


そうやって久しぶりに踏み込んだ廣瀬家。


紀天の居ないその場所は何処か寂しそうな空間だった。



「あっ、あの……。

 紀天のお母さんの……えっと、あぁ……心【しずか】さんに
 手を合わせてもいいですか?」


そうやって声を絞り出すと、


「うわぁ、晃穂ちゃん有難う。
 心【しずか】も喜ぶと思うわ。

 睦樹さん、晃穂ちゃんを心【しずか】の前に案内して」


そうやって通る声で告げると、何時の間にか着替えを済ませて
スーツ姿からラフな服装になった睦樹さんが
手招きをして私をその部屋へと案内してくれた。


時が止まったまま動かなくなった
一枚の写真の中の女性。


その人の前に、ゆっくりと手を合わせて挨拶。


手を合わせた後、立ちあがりながら
私は他の写真に視線を映した。




あれ?


棚の上に沢山、フレームに入って飾られている家族写真。

その中に……咲空良おばさんと思われる人の
妊婦写真が混ざってる。


えっ?


咲空良おばさんの妊婦姿?

だけど紀天は……一人っ子。
 






微かに辿る遠い記憶。





『あきほ、オレもうすぐお兄ちゃんに
 なるんだー。

 そしたら、そいつのお姉ちゃんに
 あきほもしてやるから』





確か公園の砂場で、そんなこと言ってた。



あれ?
紀天の弟か妹は?



その隣には、命名:尊夜。


それだけ達筆な字で綴られた写真縦。