思考がダークになりかけて、
それを払拭するように湯船の中に顔を沈める。
そのまま、呼吸を水の中で吐き出して
一気に水面から顔をあげて、前髪をかきあげると
両手でバシンっと頬に気合を入れた。
頑張れ、私。
大丈夫、努力は報われるはずだから。
何時か……自分にも素直に慣れるはずだから。
そう言い聞かせてお風呂から上がる。
浴室でパジャマに着替えて、リビングへと顔を出す。
「お風呂貰ったよ。
じゃ、お休みなさい」
「あぁ、お休み。晃穂」
「お休みなさい。クーラーで体冷やし過ぎないのよ」
「わかってるって」
ソファーに座ってTVの洋画劇場を楽しんでる両親と会話して、
そのままリビングから二階へと続く階段へと移動する。
一階から二階にあがる階段の採光用の窓から
視界に映る、紀天の家。
紀天の部屋に電気がついてるはずなんてない。
そのまま自分の部屋に戻ると、体幹トレーニングをして、
冷やさないように体を保温させながら
宿題をやりおえてベッドの中に潜り込んだ。
翌朝、いつものように家を出掛ける時、
朝練の日にも関わらず、宝珠さまが迎えに来てくれた。
お母さんに見送られて、宝珠さまの車に乗り込む。
「ごきげんよう、晃穂」
「ごきげんよう、
デューティ宝珠」
車内では、いつものように読書が続くと思っていたら
その日は珍しくお話タイム。
宝珠さまの婚約者は、昂燿校の生徒。
そんな繋がりもあって、宝珠さまが時々話してくれる
昂燿の話を心待ちにしてる私がいる。
昂燿校には紀天がいるから。
宝珠さまの口から、何時かほんの少しでもいい
紀天に関する情報が飛び出してこないか、
ドキドキして待ってる。
だけどその日は期待した紀天情報は出てこなかった。
学院内に車は滑り込んで、車を降りると
私は宝珠さまと別れて朝練用の地下プールへと向かう。