学院祭当日。
昂燿の生徒を乗せたバスから、
懐かしい悧羅校舎に降りたオレの前に姿を見せた親父。
「紀天」
オレの名を呼んで手を振った親父の傍には、
親父の友人らしい男性が一人。
その親父の友人らしいその人が、
オレたちの方に近づいてきたと同時に、
オレのジュニア・伊吹が委縮したような気がした。
「紀天、昂燿校には慣れたかい?
紹介するよ、こちらは瑠璃垣怜皇【るりがき れお】。
お父さんの友達だよ」
そう言って紹介された男の人。
瑠璃垣……?
OBとして参加してる親父の隣に居たヤツは意外性のある存在だった。
思わず、同じ苗字を持つ可愛げのないジュニアに視線を移す。
聴きなれたその苗字は尊夜の手掛かりじゃなくて、
親父の友人の名字?
「君が睦樹の息子、心【しずか】さんの忘れ形見、
紀天くんだったね。
いつも睦樹から聞いているよ。
君と逢うのは、久しぶりだな。
大きくなったね。
まさか私の息子のデューティに君がなっているなんてね。
正直、驚いたよ。
これも運命か……」
そうやって手を差し伸べてくるその人。
戸惑いながら、その手に握手を返すオレ。
私の息子のデューティ?
その人は確かにそう言った。
それは……紛れもなくオレのジュニア、
瑠璃垣伊吹の父親だとこの人は言ってるわけで。
伊吹が委縮した理由も少し理解できた。
だけど……こいつは尊夜のアルバムに挟まれてる
双子写真の片割れなわけで。
突然の紹介は、オレを混乱させるばかりで、
頭の中で必死に整理しようにも追い付かなかった。