後は智海のペース。

ズルズルと引っ張られるままに、
連れていかれた洗い場。


血がついた手の甲を洗い流して、
綺麗にふき取る。




「智海、晃穂ちゃん……」



洗い場に顔を出したのは凌雅。



「凌雅、今から一綺さまの傍に行くよね。

 宝珠さまに、晃穂、手を怪我したので保健室で処置して貰ってから行きますって伝えて。
 ついでに優愛も先に連れていっといて」


「OK。
 んじゃ、智海後でな」




そう言いながら、お互いが近づいて触れ合うのは、唇と唇。
そんな二人をちょっぴり羨ましく思う心の中。


その後の私は、智海のペースで保健室に連れて行かれて、
手の甲の消毒をして貰う。


そのまま、ボロボロになったコサージュを
もう一度、綺麗にさしなおして貰って血が滲んでしまったグローブを捨てて、
真新しいグローブを泣く泣く購入。



なんでグローブ一つがこんなに高いのよ。




自分が招いたこととはいえ、財布の中身は寂しくなるわ、
手の甲はまだ痛いわ。



心の中も痛すぎて。





ようやく合流する宝珠さまにも、
怒られるやら、心配されるやら。






華やかな世界に対して、居場所がない私は必然的に壁側へと引っ込んでいく。



壁の隅、ボーっと立ちながら無意識に追いかけていく視線は、
紀天ウォッチング。




やりたくないのに、気になるままに追い続ける視線。