今、伊吹と呼んでいるアイツが何者かなんて、
今のオレには到底知る由もない。




慣れない生活は、
ストレスを強くさせながらゆっくりと過ぎていく。





相容れない……ガキと過ごす日々。




入寮式から二週間。

そして入学式から更に一週間が過ぎた頃、
生徒総会主催の春の学院合同祭の日が訪れる。



季節ごとに何度か生徒総会主催で行われる
合同祭は三校の生徒が理事長がいる悧羅校へと集まる。



その日は朝から昂燿校からも盛装した生徒たちを乗せた
何台ものバスが悧羅校へと向かっていった。



久しぶりの古巣、悧羅校。



晃穂にも逢えるだろう、
凌雅とも話せるかな。



そんな軽い気持ちを抱きながら到着した悧羅校の迎賓館。





生徒総会メンバーのデューティーを持つ、
オレに心が休まる時間なんてなかった。




どうしてた?



悧羅でも光輝総代のデューティーをしてたから理解していたはずなのに。





グラン・デューティ裕学院最高総の周辺には、
次から次へと雲上人を一目見ようと生徒たちが集まってくる。



その時点で、人がごった返す会場内。



人に溢れかえるその場所でオレだけが、
自由行動させてくださいなんて言える環境ではなかった。



集まってくる人の嵐の中、
グランデューティとデューティの傍で笑顔を振りまく時間。



グラン宛の手紙を持つ人がいたら目安箱宜しく、
その手紙を受け取ってまとめて手渡す。




伊吹もまた他の生徒総会メンバーのジュニアたちと一緒に、
ドリンクを手渡す係りで忙しなく動き続けていた。




春の学院合同祭。
気になるアイツを見つけられぬままに時間が過ぎていった。