まっ、これはジュニアが幼過ぎる年だったからかもしれないが
その延長戦が常識の範囲で続くと思っていた。

だが高等部からの寮生活は全く別物だった。


伊吹がしていることを一つとっても、
昂燿校の中等部の奴らは、かなり大変なんじゃないかと思ってしまう。



伊吹はグランまでのシャツのアイロンがけも皺一つなく糊でパリっと仕上げていく。



いっちゃ悪いが、オレはアイロンなんてかけれない。



その時点で、昂燿でジュニアを指導できる立場じゃねぇだろなんて内心思い、
焦る心は自らもそのスキルを磨きたくなる。



そして一人、自室に籠ってアイロン道具一式を借りて試みるものの、
どうしても上手くかけられない。



そんなオレを見て溜息をつく伊吹。




昂燿の特殊な寮生活に置いては、
新参者には理解しがたく全てにおいてジュニアが勝る状況下。




オレと伊吹の距離は縮まるどころか、
オレが何かやらかすたびに広がっていくようで。




寮生活に居るより、
学校での授業時間の方が息抜きが出来る始末。




重症だろ。




こんな中、携帯に一度、晃穂から連絡が来たこともあったが、
返信すら出来ぬまま時間だけが過ぎていった。



アイツに弱音はいてしまいそうで……今は連絡なんて出来ねぇ。



オレが昂燿に来た理由。




それは幼い頃から、聞き覚えのある【瑠璃垣】の名字。
泣いていた咲空良さん。



珍しい苗字、僅かな手がかりでも尊夜の手掛かりが欲しい。




その一心で、転校を決めた。




まずは親密度を深めて、いろんなプライベートの話を
出来るような関係を構築すること。



それが大切なんだけどな。



親密度を深めようと思えば思うほど距離が遠のいていきそうだよ。