オレの昂燿校での生活は前途多難の中、
幕を開けた。


入寮式、紹介されたジュニア。
瑠璃垣伊吹。


こいつとのフィーリングのなさに振り回されていた。



オレを起こしにくるジュニアの一日の始まり。




「おはようございます。
 デューティー、紀天お目覚めの支度を」



そう言ってゴソゴソとオレの部屋のドアを開けてモーニングコール。


HBW制度は確かに悧羅校でもあった。


だが……昂燿校のHBW制度は、
今まで俺が経験してきたそれとはまた違った感覚で戸惑いばかりだった。



後輩から順に起床して先輩を起こしていく。


寮の中に一斉に流れる起床アナウンスは、
ここでは流れない。



「お前さー、堅苦しすぎない?

 オレはお前のデューティーになったけど、
 こっちのことはお前の方が詳しいだろ」


ベッドから体を起こしながら、
少しでも打ち解けたくて話しかける言葉。



「そうですね。
 確かに僕の方がここは詳しい」


伊吹はそう言った後、
更に続く言葉はなく沈黙の後はいつもの堅苦しい口調に戻って言葉を続ける。


「失礼しました。口が過ぎました。

 これが学院の方針です。
 レストランに食事を受け取りに参ります。
 デューティ-もお支度を」


形式的に伊吹は告げると一礼してササっと出掛けていく。


オレは、そんな伊吹と少しでも長く時間を作りたくて
着替えもそこそこに、ラフな格好のまま部屋を飛び出して追いかけた。




「伊吹、おいっ、待てよ」






追いかけるオレに、伊吹はクルリと振り向くと冷たい視線を残して溜息一つ。