「……篠岡さん」



唐突に背後から声を掛けられて、私は思わずびくりと肩を震わせた。

おそるおそる、後ろを振り向くと――。



「……みやうち、せんせ……」



乱れた呼吸を整えていた先生は、1度大きく、ふぅっと息を吐いて。

そうして私と視線を合わせるように、その場にしゃがみこむ。



「な、なんで……」

「……授業中、いきなり生徒が泣きながら教室を出ていったら、そりゃあ気になるでしょう」



言いながら、ためらいがちに、先生は私に右手を伸ばした。

だけどその手が、私の髪に触れる直前……思いとどまったように、引っ込める。


――ああ、違うのに。

触れて欲しくないわけじゃ、ないのに。


涙でにじむ視界の中で、先生が、苦く笑った。



「……ごめんね。俺の、せいだよね」

「――ッ、」



その、声に。

その、表情に。

弁解したいと思っても、出てくるのは涙と嗚咽ばかりで、うまく言葉が出てこない。

……先生、先生。

私だって、自分のせいで。先生にそんな顔、させたくないんだよ。