「わ、たしっ、保健室に、行ってきます……!」



なんとかそれだけを言い残して、私は先生と目を合わせることもなく、足早に教室を後にした。

涙を必死で拭いながら、どこへ向かうでもなく、ただただ廊下を進む。


どうしよう。宮内先生、気にしちゃってるかな。

それとも、面倒くさいって、思われたのかな。

ちょうど廊下の突き当たり、階段のところまで来たところで――私はその場に、とうとうしゃがみこんだ。



「ッ、ふ……っ」



もう、私、なんで泣いてるのかも、わかんない。

でも、ただ、今、悲しい。

……もう、宮内先生が自分に笑いかけてくれないと思うことが、悲しい――。



「う、……ふ、ぅ……」



私はしゃがみこんで、自分の両手で顔を覆うようにして、泣いていて。

……だから、気がつかなかった。

自分のすぐ後ろに、少しだけ息をきらして私を見下ろす人物が、いることに。