「──い、先生?」



自分を呼びかける声にハッとして、俺は顔を上げた。

篠岡さんが不思議そうな表情で、こちらを見遣っている。

しまった、と内心舌打ちして、取り繕うように俺は笑みを浮かべた。



「ごめんね篠岡さん、ぼーっとしちゃってた」

「いえ……宮内先生、大丈夫ですか? 疲れてるとか……」

「いや、本当になんでもないから。気にしないで」



俺が片手を上げてそう言っても、篠岡さんはなんだか釈然としない表情で。

そしていつものパイプ椅子から立ち上がると、なぜかこちらに近づいてきた。



「先生、もしかして体調悪いんじゃないですか? それなら、今日はもう帰った方が、」

「僕は元気だよ。ほんと、大丈夫だから」

「でも先生、なんだか、顔色も良くないし……」