「あ、みゃーくんおはようございまーす」

「はい、おはよう」


「みゃーくん、次のテストどこ出すか教えてよ~」

「教科書全部読めば8割方とれるよ」

「ちょ、鬼畜!」



ひとつ授業を終え、職員室へと戻る道中。

廊下のあちこちで生徒たちと会話しながらも、2階へ下るために北階段を目指していると。



「──でさ、──が──」

「(ん……?)」



不意に曲がり角の向こう側から聞こえてきた声に、俺は思わず足を止めた。



「ったく、ほんとうらやましいよなー、鎌田ってばよぉ」

「ははは」

「うわこの笑顔がムカつくー」



……やっぱり。鎌田とその仲間たちか。

教師としてあるまじき感情だが、俺はついついため息をもらす。

どうやら鎌田たちは、この先の北階段あたりに溜まっているようだけど……この角を曲がらなければ、そこへは行くことができない。

意を決して、足を踏み出そうとすると──。



「──でさ、どうなんだよ、サチちゃんのことは」



次に聞こえたせりふに、俺はまた、ぴたりと足を止めた。