うわ、やばい、どうしよう。

すっごく、うれしい。

彼女のことを、むちゃくちゃに抱きしめたい。


別にこのお菓子は……俺のためだけに作られたわけじゃないって、わかってるのに。

だけどどうしようもなく、舞い上がってしまう。

……これが惚れた弱み、ってやつかな。



「……ありがとう。大事に食べるね」

「ふふふ、はい!」



……ああもう、俺の言葉で、そんなにうれしそうに笑わないでほしいな。

どうにか、してしまいそうになる。


俺は心の中のどす黒い衝動を振り払うように、椅子から立ち上がった。



「紅茶、おかわり飲む?」

「え、あ、すみません! お願い、します」

「はーい」



電気ケトルで、お湯を沸かし直しながら。

俺は彼女に気づかれないよう、今度こそ、深々とため息を吐いた。