「あー、うん、よし。えーっと……ひとまず、篠岡さんがここに来た理由はわかったんだけど……でも、どうして僕に?」



そう、そこが今1番の謎だ。こういう類の相談なら、同年代の友達にするのがベターだと思うんだけどな。

先ほどの衝撃からおそらく若干引きつった笑顔になっているだろう俺の質問に、彼女はやはり恥ずかしげな様子で、言葉を返す。



「あの、実は同じ2Aの綺里ちゃんに相談したら、『宮内先生なら身近な年上の男性だし、いいアドバイスくれるんじゃない?』って言ってくれて……」

「え、キリちゃん、って……雛瀬さんが?」

「あ、はい」



こくりとうなずいた篠岡さんを見て、俺は彼女には見えないよう今度こそ頭を抱えた。

……そうか……あの子の差し金、ね……。

美人で、だけども時折黒い笑顔を見せるとある教え子の顔を思い出し、思わずため息をつきたくなる。

するとそんな俺の様子に何を思ったのか、「あの、」と背後から、控えめに声をかけられた。

振り返った俺の視線の先には、椅子に腰掛け居心地悪そうに縮こまっている、篠岡さんの姿。