話しかけられて顔をあげると
可愛い顔して無愛想な龍とは対照的に
切れ長の目でクールそうな顔つきに似合わないくらい人懐こい表情の男の子の視線が私の持つカシスオレンジにむけられていた。



「でもなんかこれジュースみたいで。意外と大丈夫かなって」


そう答えた私に、でもお酒はお酒だから気をつけないと
と言って、こっそりレモンソーダと交換してくれた。
それならサワーに見えるから、バレないよ。とのこと。


えらく上からくるものだから、てっきり上級生だと思っていたら
私たちと同じ新入生。
私たちと違って、ちゃんと受験して入学し、彼も野球一筋できたらしい。
そしてレモンソーダ片手に彼、楠木陸と目立たないようにすみっこに移動する。

「あ、玲じゃん。いたんだ」

そう、部には私達を一緒に高校で部活をしていた先輩も、少ないけれどいるはずだった。


遅れてやってきた顔なじみの先輩と、楠木陸と
その日は最後までしっぽり飲む事ができた。


女の子達に囲まれて困った顔の龍を遠くから眺めて、
先輩達とふざけるのは楽しかったし、
完全に内輪のノリで盛り上がる私たちに、なんの違和感も無くまぎれこむ楠木くんはすごい逸材だと思った。