頭痛を抱えながらなんとか部活をやりきった。

練習の仕上げはなぜか、
グラウンドに向かって整列し、校歌を歌う。

大学の校歌なんて歌えるのは
野球部員だけなんじゃなかろうか。

高校まではともかく、大学に入ると歌う機会なんて入学式と卒業式くらいだ。


陸も先輩も何事もなかったかのようにしている。
実際、何も無かった。
彼らはいつものようにおしゃべりをしていて、
ちょっと不謹慎が過ぎた部分を陸が諌めた。
それだけなのだから。


帰り道、龍はあきらかに事情を聞きたそうにしていて
私はこれでもかというくらい聞かれたくなさそうにしていた。


「大丈夫なの?」


「大丈夫。頭痛いだけ」


「陸になんか言われたの?」


「なんで陸なの?」


「なんとなくだけど」


まぁ遠からずってとこかな。
でも陸は私に言ったわけじゃない。

「悲しくて泣いてたわけじゃないから。大丈夫」