「わたしとあなたの結婚が決まれば、宮中での権力は父のものですからね。あの時点でわたしはセシリーの支配下にあったけれど、父は違った――確かではない記憶でしかありませんが。あの時点では、皇后陛下と何か取引をしていたのかもしれない」

 ダーシーの言葉に、アイラは納得してしまった。

 あの日、一度だけ直接会ったレヴァレンド侯爵は妙に艶々としていた。権力に対する欲望がかないそうだと思ってのことだとしたら、艶々しても当然な気がする。

「三つの術はいずれも禁忌だから、資料を集めるのに苦労した。ジェンセンはよくあれだけの量を集めたものだと思う――それと、カーラが使用人たちの遺体を調べた結果わかったことが一つ」

 再びベリンダが口を開く。

「先ほど生贄、と言ったのは――死者を蘇らせた場合、他者の命を吸い取らなければ肉体を保つことができないから――わたしはただの伝承だと思っていたのだけれど」

「――なんてこと!」

 エリーシャは座っていたクッションから腰を浮かせた。