「関東大会以来だよね。会うの」

ここは1位おめでとうって言うべきなのかな?

でも今言っても思い出したから言ったみたいにならない?それにおめでとうなんて捨てるほどみんなから言われただろうし。


「恭平なにか言ってた?」

カランとコップの中の氷が溶ける。

休みの日ぐらい須賀の話はしたくないんだけど、どうしたって圭吾くんの関心の中に須賀はいる。


「べつになにも……」

須賀とはただのクラスメイトだし、私に聞かれても困る。

まあ、『次は絶対俺が勝つけど』なんて笑ってたけど、そんなことわざわざ伝える必要はない。


「改めて、恭平が同じ高校じゃなくてよかったって思ったよ」

その顔はなぜか笑顔。


「俺さ、ずっと叔父さんがいる高校に行くつもりだったんだ。でも恭平が行くって知ってやめた。恭平と同じ水泳部になったら仲間になっちゃうじゃん。なんかそれだけはどうしてもイヤで……。」

「………」
 
「叔父さんにはめちゃくちゃガッカリされたけど、今となっては有由高を選んでよかったって思うよ。いいコーチにもめぐり合えたしね」


圭吾くんの姿勢はいつもまっすぐ伸びていて凛としている

みんな青春真っ只中って感じで、羨ましい。


私は恵まれた人に対してずっと嫉妬のような感情を抱いてた。でもそこには運だけではなく、努力と気力と根性でそれを掴みとった人もいる。

その場所から転げ落ちないように必死でもがいて。それは本当に命掛けで。

きっと須賀だってそう。