「すずに似合うと思ったんだよね」
たしかにさっきアクセサリーショップに立ち寄ったけど……。
「すずにプレゼント」
「え?」
紗香は満足そうな顔をしてジュースを飲みはじめた。
こんな可愛いヘアピンは持ってないし、普段は髪の毛なんて寝癖を直すだけ。
「わ、私誕生日じゃないよ?」
もしかして誰かと勘違いしちゃってる?
「はは、知ってるよ。誕生日じゃなくてもすずになにかプレゼントしたい気分だったの」
「でも……」
「それに最近少し元気がなかったでしょ?それを付けてまた休みの日に買い物に行こうよ」
紗香の優しさに泣きそうになってしまった。
紗香は私が毎回プールの授業を見学しても「なんで?」って聞かないし、なにか浮かない顔をしていても深く探ってこない。
私はそれに安心して、打ち明けるという手段を回避している。
だけど、いつか口に出せる日がきたら……ちゃんと全てを紗香には伝えたい。
友達なんていつの間にかできて、いつの間に去っていくものだって思ってたけど。
紗香は失いたくない人のひとりだから。