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そして週末。私の不安定だった心は少し落ち着いて、今日は紗香と街で買い物中。

ずっと紗香は部活漬けの毎日だったし「息抜きできて嬉しいー!」ってずっとハイテンションだ。


「そんなに洋服買って大丈夫なの?」

紗香の手にはすでにショップ袋がふたつ。


「いいのいいの。最近ぜんぜん洋服買ってなかったし、部活ばっかりしてるとオシャレを忘れちゃうからさ」

私の目から見れば紗香は十分オシャレで可愛い。

私なんていつも着まわしだし、買い物意欲はあまりないほうだから、紗香のあとを付いていってるだけ。


「ちょっと喉乾いたからお茶でもしようか」

紗香はそう言って人気のカフェに入った。

ふたりで夏季限定の夏みかんジュースを頼んで、パラソルがある外のテラス席で飲むことにした。


……なんかこんなにゆったりとした時間は久しぶりかも。

なんだか毎日が目まぐるしくて、こうして買い物したりする時間を忘れていた。


「あ、そうだ。すず」

「んー?」

ストローでジュースを吸いながら紗香のほうを見ると、突然私の前髪になにかを付けた。

手で触るとそれは固くてなんだか表面に凹凸(おうとつ)がある。


「これ、なに?」

私が取ろうとすると紗香はダメダメ!と言って手鏡を見せてくれた。

鏡に映った私の前髪にはゴールドの可愛いヘアピンがしてあって、パールとエメラルドが交互に装飾してあって花の形になっている。