話さないつもりだったのに声を出してしまった。
「やっぱり元気じゃん」
「……うるさい」
須賀と話してると調子が狂う。
須賀は怪我をした指に絆創膏を貼りながら、じっとなにかを言いたそうに私の顔を見た。
「間宮ってさ、人に対しては言いたいことが言えるのに自分のことになるとダメだよな」
「なにが?」
今はひとりでいたいのに、須賀はなかなか立ち去ろうとしない。
「ずっとなにかをぐるぐる考えてるっていうか。そういえばお前が笑った顔って見たことないんだけど」
そんなこと……須賀に指摘される覚えはない。
「そうやって外に吐き出さないからどんどん重くなるんじゃね?」
「わかったようなこと言わないで」
私は堪らずに須賀を睨みつけた。
さっきからなんなの?
急に現れて、ペラペラと知ったようなことを言って。
「じゃあ、話してみろよ。わかってやるから」
「あんたに私の気持ちなんて分かるわけない」
そう、だれにも私の気持ちなんて……。
「お前はそうやって理解しようとするヤツを分かるわけないって突っぱねるんだ」
「………」
「分かってほしいならちゃんと口にしろよ。自分以外の人間がエスパーだとでも思ってんの?」
うるさい。うるさい。うるさい。
「もう、うるさい!偉そうに説教なんてやめてよ!」
私は耳を塞ぐように布団を顔まで被った。
暗い。真っ暗だ。
すぐにこうやって情緒が不安定になって崩れてしまう。
「間宮はなにをそんなに怯えてるんだよ」
私は聞こえないふりをして返事をしなかった。