バケツを片付けにきた須賀と目が合って、私は軽く手招きをした。
「あれ、間宮どうしたの?」
……どうしたのじゃないよ。まったく。
「日誌。私だけのサインじゃダメだって。書いてくれないと提出できないし帰れないから書いて」
私はそう言って、まだ濡れている須賀の手に無理やり持たせた。
「わっ、バカ。今渡されても困るって」
「困ってるのは私なの」
「わかったわかった。ちょっと誰かにペン借りてくるから待ってろ」
待ってろとか、なんで私が命令されなきゃいけないの。
私は日誌を持って男子更衣室に消えていく須賀を見ながら、ため息をついた。
「私、外にいるから」
その声が果たして須賀に聞こえたかどうかは分からないけど、このままプールサイドで立ってても他の人の邪魔になりそうだし。
「……すずちゃん?」
夕焼けになった空のに出るとすぐに誰かに声をかけられた。
「あ……」
それは圭吾くんだった。
なんでまたうちの学校にいるんだろう。
「今水泳部から出てきたけど、もしかしてすずちゃんマネージャー……」
「違うから」
けっこう強めに否定してしまった。