「須賀って自分は絶対嫌われないって自信があるでしょ?むしろ嫌われたことない?たまにいるよね。そういう不のほうに無縁な人って」
須賀を見てると、なんでも思いどおりになっている気がして自分の運のなさと比較してしまう。
「じゃ、間宮は好かれるより嫌われてたほうがラクだって思うタイプ?たまにいるんだよな。裏切られたり失ったりするのが怖いってヤツ」
その言い方にムッときた。
「それが普通だよ。須賀みたいに自信家の人には一般的な考えは理解できないだろうね」
「そう思う?だった多分間宮って俺のことすごい勘違いしてると思うよ」
……勘違い?
そろそろ教室に戻らなきゃいけない時間なのに須賀はマイペースに古い資料の本を無意味にパラパラとめくっている。
「たしかに自信家っていうか、水泳に関しては誰にも負けたくないって思ってる。でもそれだけ」
「………」
「水泳だけなんだ。俺にとって興味があることって」
私が回した地球儀は音もなく、ゆっくりと止まった。
「だから誰にどう思われてるとかどう見られてるとか、ぶっちゃけ全然興味ない。つーか友達と遊ぶことより水泳してるほうが楽しいし、今までそうやって泳ぐことだけを優先してきたから」
「………」
「それで友達が減ったり、むしろ付き合い悪いって離れていったヤツも大勢いるよ。だから間宮の言ってることは勘違い。嫌われない自信じゃなくて嫌われてもいい自信ならあるってこと」
「………」
「でもべつにいいんだ。水泳が今の俺には全てだから。な?俺って間宮よりも冷たいヤツだろ?」
それを笑って言えてしまう須賀はやっぱり自信家なのかもしれない。
だけど須賀には私と違ってブレない強さがある。