とりあえず用を済ませた私はそのまま外に出た。
さっさと帰りたいのに、バタバタと追いかけてくる足音が背後で聞こえていた。
「間宮。大会のスケジュールありがとな。後でコーチに渡してとく」
須賀はジャージの上着だけを羽織り、髪からはポタポタと水が垂れていた。
引き止められたことで、忘れかけていたもうひとつの用を思い出した。
「……今日、須賀が私を助けてくれたんでしょ」
それに教室で庇ってくれたことも。須賀の性格上、恩を売りたくてしたんじゃないことぐらい分かってる。
「一応、お礼を言っとく。ありがとう」
須賀のことは相変わらず苦手だけど。
「おう」
須賀の返事はシンプルで、それが少し気にくわない。
もっと恩着せがましいヤツだったらこっちもラクなのに。
「……あと、保健室で言ってた八つ当たりってやつ。的外れでもないからそれも謝る」
なぜか須賀の前ではいつも強い発言をしてしまう。言った本人より言われたほうが気にしてないのがどうかと思うけど。
「いいよ別に。俺メンタル強いからどんなに八つ当たりされても平気だし」
須賀はそう言って持っていたミネラルウォーターを飲んだ。
ほらね。まったく気にしてない。なにこの余裕な感じ。