「コーチに用?それなら今は止めといた方がいいよ」
……たしかに。今はとても話しかけれる雰囲気じゃない。
「じゃ………これ渡しといて……」と紙を差し出そうとした瞬間、なぜか話は別の方向へ。
「あれ?そういえばキミって須賀と同じクラスだよね?待ってて。今呼んできてあげるから」
「え、いや……」
ちょ、ちょっと待って。
ぜんぜん須賀に用なんてないし、この紙さえ渡せば私の用は終わりなんだけど!
なんて思っている中、ありがた迷惑なことに須賀が私の目の前に現れた。
「間宮?なに?」
須賀は練習中だったのか、体は水で濡れている。私は意味もなく須賀の足元に溜まっている水たまりを見つめた。
「……須賀に用はないけど、これ」
もう須賀でも誰でもいいから早く用を済ませて帰りたい。
「大会のスケジュール?ああ、たしか変更になったって聞いたけど」
「知らない。私はただ担任に頼まれただけだから」
この時期は水泳以外にも色々な大会がある。
部活の顧問をしている担任が忙しいのは分かるけど、あの場で用事を押し付けられる私は本当にツイてない。
「おい。須賀。1年がストロークの練習するから2年は10分休憩だって」
その言葉どおり、2年生はぞくぞくとプールサイドへと上がってきた。