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「はあ……」

考えた末、私は仕方なく水泳部に行くことにした。


あとで怒られるのも面倒だし、すぐに紙を渡して帰ればいいだけのこと。

水泳部が活動している室内プールからは絶え間なく水音が聞こえてくる。ドーム型の屋内は遊泳施設のように立派な造りだった。


重たい足取りで中に入ると、すぐに塩素の匂いが鼻につく。


バシャッ。バシャッッ!

コース台から次々水の中へと飛び込んでいく水泳部の人たち。

この熱気、この音、この匂い。やっぱり来なければよかったと少しだけ後悔していた。


「あれ?見学の人?」

私に気づいたひとりの水泳部員が声をかけてきた。

名前は知らないけど多分、同級生だったはず。


「こ、顧問の先生は……?」

そう聞いたあと、室内に怒号が飛んだ。


「大会まであと少ししかないんだぞ!いい加減な泳ぎしてるヤツは今すぐやめちまえ!!」

学校でも熱血で知られているこの先生の名前は長谷川(はせがわ)先生。

見てのとおり、水泳部の顧問兼コーチだ。