そのあと私は何度も須賀にお礼を言おうとしたけど失敗した。だって授業中も休み時間も須賀はずっと寝てるから。
須賀は恩を売るタイプじゃないし、私を庇ったのだって深い意味はない。
でも助けられたのは事実だし、早くお礼を言ってしまいたいのに本人は起きる気配なし。
そんなことを思っている内に、気づけば放課後になっていた。
「あー今日もよく寝た」
帰りのホームルームが終わると、須賀はあっさりと目を覚ました。
結局、まともに起きてたのはあのプールの授業だけ。それなのに許されてしまう須賀を私はやっぱり良く思えない。
「……あ、あのさ……」
お礼を言うのは今しかない。さっさと言って終わらせよう。隣の須賀に目を向けると、もうそこに姿はなく……。
「ん?すずどうした?須賀なら部活行ったよ?」
紗香の言葉で私はピクピクと眉がひきつる。
普通起きて1秒で部活に行く?
こっちはずっと起きるの待ってたのに。
きっと須賀の頭は水でできてるんだ。
泳ぐことしか考えてない水泳バカ。これだからこっちはペースを乱される。