右手で頬を触ると、たしかに私は泣いている。
情けないのか悔しいのか、涙の理由さえ見つけられない。
「……え、どうした?どこか痛いとか?」
須賀が心配そうな顔をしていた。私は涙を拭い、ゆっくりと起き上がる。
「べつに平気。なんでもない」
「はあ?なんでもなくて泣かないだろ?」
これは泣いたんじゃなくて流れただけ。自分の意志とは無関係に流れただけだよ。
「だからなんでもないんだって。それに須賀には関係ないじゃん」
とても強い口調で言ってしまった。
私って本当に須賀の前ではダメだな。
さすがの須賀も怒ると思いきや、またしても拍子抜けの反応が。
「なんかわかんねーけど、俺八つ当たりされてる?」
どうして須賀の答えはいつも想像していたものと違うんだろう。
「……なんなのもう。また頭が痛くなってきた」
自分の口からため息しかでない。すると須賀は手に持っていたミネラルウォーターを私に差し出した。
「炭酸は嫌いでもこれなら文句ないだろ?」
「………」
炭酸が嫌いだなんて嘘。あの時は不機嫌で、ただ須賀の優しさを受けとりたくなかっただけ。
私はそっと飲み物を受け取り、それを一口飲んだ。