それは着ていたジャージの色が変わるほど。私の前髪からは水滴がポタポタと垂れていた。
「須賀(すが)!飛び込み禁止って言ったろ!?」
すぐに先生の怒号が飛んだけど、当の本人はまるで反省の色はなし。
「すいませーん。だってみんなが見たいって。な?」
周りの生徒たちもケラケラと笑っていて、先生も何故かこいつには甘い。
「ったく。飛び込みは部活の時だけだからな」
「了解でーす」
妙にテンションの高い態度が私をさらにイライラさせる。しかもこいつのせいでジャージが濡れたし。
「先生、濡れたんで着替えてきていいですか?」
楽しそうな雰囲気をぶち壊すように、私は不機嫌だった。
夏、プール、須賀。
どれも私にとって嫌いなもの。
立ち去る寸前、須賀は私を呼び止めた。
「間宮わりぃ。わざとやったわけじゃないから」
学校指定ではない自分の水着。明らかに他の男子とは違う体つき。
私はこの理由を知っている。
「わざとじゃないなら初めからやらないで」
私はそう言って須賀を睨みつけた。