須賀のことなんて大嫌いだって思ってたあの頃。

私は毎日イライラしていて、自分の心にある重りに押し潰されながら深い場所に沈んでいた。


だから、まっすぐで、水の中でしか生きられない須賀をひどく遠ざけた。 

それなのに私がプールの授業で溺れた時、真っ先に助けてくれたのは須賀で。


――『いい加減にしろ。人の失敗を笑うなんておまえら最低だな』

私のことを笑うクラスメイトたちを叱ってくれた。


水泳のことしか頭になくて、ただのバカだって思ってたのに。休日には小さい子に泳ぎを教えてあげて〝恭平先生〟なんて呼ばれちゃって。


『間宮ってさ、人に対しては言いたいことが言えるのに自分のことになるとダメだよな』なんて、的を射たことを言ったり。

『私なんて、とか言うな』と自分を否定した言葉を使うと真剣に怒られた。


そんな色々な顔を知って、須賀はただの水泳バカじゃないって。ちゃんと芯が強くて、優しさがあって、遠ざけたかったのに、そうできなくなった。


だから、全部話した。

須賀だから、話せた。

話せたから、向き合えた。

向き合えたから、私はまた笑える。