そのあと行われた100メートル自由形の予選は、もちろん須賀は余裕で通過。

その中で1位通過は圭吾くん。


圭吾くんも今日のためにコンディションを整えてきたのか、その速さは一段と上がっていて、圭吾くんは予選ですでに自分の持っていた日本記録をあっさりと塗り替えた。

そのタイムが大きな電光掲示板に映しだされると、会場は地鳴りのように湧いた。


「圭吾くん本当にすごいね。なんで天才同士が同じ舞台なんだろう。ちょっともったいない気もするね」


須賀と圭吾くんは同じ学年で同じ競技。

もしなにかが違っていたら、ふたりはいちいち比べられることはないし、競い合う必要もなかった。


きっとお互いに一番高い場所に登って、一番綺麗なメダルをもらうことができたはず。

でも神様がいじわるだなんて思わない。

ふたりは互いの存在があるからこそ、上を目指す。

そんな人に出逢えることも、きっと奇跡だ。


会場では次々とプログラムどおりに競技が終わっていく。

大きなプールの上には長い赤と黄色のコースロープが揺れていて、天井の照明の明かりが水面に映る。


そして……。


「男子100メートル自由形決勝戦のコース順をお知らせ致します」

会場のスピーカーからアナウンスが聞こえて、周りがまた歓声に包まれる。

プールの入り口から入場してくる選手たち。


予選1位通過の圭吾くんは第4コース。

予選2位通過の須賀は第5コース。