須賀と会うのはあの一件以来。
メールのやりとりは何回かしたけど、大会に向けて最後の調整をしていたし、毎日部活で忙しそうにしてたから。
「どこら辺で見る予定?」
「まだ決まってないけど全体が見えるように中央の2階席がいいかなって」
「そっか」
大きな試合前だっていうのに、やっぱり須賀は落ち着いてる。悟られないようにしてるけど、なんだか私のほうが今から緊張してきちゃう。
スタートで失敗したらどうしようとか、フライングを取られて失格になったらとか。
だって努力のすべてが今日で決まる。
「あ、あのさ……」
そう言いかけたのは私。
予選がはじまったら決勝だし、大会が終わるまで須賀には会えないかもしれない。
だから力になるような言葉のひとつやふたつでも言おうと思ったのに、どこからか見知らぬ女の子たちが須賀の周りを囲む。
「あの、私たちファンなんです!応援してるんで頑張ってください!」
さすが全国大会。女の子たちのレベルも高くてみんな可愛い。
さぞ、鼻の下を伸ばしてると思いきや須賀は「ありがとうございます」と営業スマイルを浮かべるだけ。
もしかしたら対応するのに慣れているのかも。前に写メとか無断で撮られてる時もあったし。