テーブルにジュースを出してドーナツを食べながら、紗香が棚の上に水槽に気づいた。


「あ、これお祭りのときの?」

「うん」

須賀がとったものだってことは紗香も知っている。最初は飼える自信がなかったから紗香に預けようと思ったけど、猫がいるからダメだと断られた。


「可愛いね。向かい合って泳いでる」

「いつもだよ」

「仲よしなんだねー」

私に魚の気持ちは読めないけど、もしかしたら須賀は読めていたのかも。

だって須賀がおじさんに頼まなければ、この金魚もひとりぼっちのままだったから。


「ねえ、紗香。私ずっと言えなかったことがあったんだ」

今日はそれを打ち明けるために来てもらった。


本当は一番に話そうって決めてたけど、話せる人がひとりじゃなくて、ふたりいる私は幸せ者だ。


私は海斗のことも、水のことも、全部話した。

最初はビックリした顔をしてたけど、紗香は「うん、うん」と優しく相づちをしながら聞いてくれた。


「だからプールの授業の時はいつも休んでたんだね」

「うん。ずっと黙っててごめんね」


私に勇気さえあれば、もっと早く打ち明けられたかもしれないけど。たぶんこのタイミングじゃなかったらダメだった。

そう思うと悩んだことも苦しんだことも、すべて今日に繋がっていた気がする。

そんな風に今は思える。