「ふ、あはは」
わからないけど、自然と笑い声がもれた。
笑っているのは私。
だって、こんなにスッキリとした気持ちなんて久しぶりなの。
プールに体が浸かっているのに震えなんてなくて、むしろそれは心地いいくらい。
「須賀、私わかったよ」
色々とあった、ありすぎたけれど。
やっぱり私も行き着く答えは水泳が好きだってこと。
「弟は……海斗はもういないけど、私の中にちゃんといる」
だから、いっぱいいっぱい思い出すよ。
明日も明後日もその次も、ずっとずっと、海斗が大好きだった水泳と一緒に。
「うん。きっと一番近くで笑ってくれるよ。今の間宮と同じ顔で」
いつの間にか外はすっかり暗くなっていて、天窓からは丸い月が浮かんでいた。
海斗。
私は海斗みたいに泳ぎは上手くないし、叶えたかった夢を代わりに叶えてはあげられない。
でもね、ひとりだけ。
海斗が憧れ続けて、私を暗闇から導いてくれた須賀なら、きっときっと――。
「ってか帰りどうすんの?」
須賀が私の洋服を指す。
どうする?そんなの私が聞きたい。
「須賀の服貸してよ。ブカブカでもそれ着て帰るから」
「は?じゃあ、俺は?」
「……水着で帰れば」
「いや、捕まるわ!」
また笑い声が響いて、このあとどうやって帰ったかは私たちだけの秘密にしておこう。