「自分が死ねばよかった、なんて言うな」

「………」

「それとも溺れるお前を黙って見てる弟ならよかったの?それで自分が死んで弟の泳ぐ姿を空から見られれば本望?」

「………」

「そんなわけないだろ。弟には泳げる力があった。だからお前を助けに行ったんじゃねーか」


厳しさの中にある須賀の優しさ。

わかっている。

須賀が言ってることも海斗がしてくれた行動も全部わかってるよ。でも……。


「だから後悔してるの。自分が溺れなければ。あの時川に行かなければよかったって。自分のせいで誰かが死ぬツラさなんて経験しなきゃわからないよ。しかもそれが弟だなんて……」


――パシャッ。

その時、冷たい〝なにか〟が顔に当たった。

手で触れると指先が濡れている。それが飛んできたのはもちろん須賀のほうから。


「……なにすんの?」

私の表情が一気にムッとした。

だって須賀が私に向かってプールの水をわざとかけてきたから。


「頭冷やしてやろうかと思って」

あまりに悪びれた様子もなく須賀が言うもんだから、私は勢いよく立ち上がった。


「もういい」

べつに慰めの言葉が欲しかったわけでも、同情の言葉が欲しかったわけでもない。

でも、私にとってこれを言うのはとても勇気がいることだったから。それをわかってもらえてない気がして腹がたった。