「弟の夢は水泳選手で。須賀は練習する場所が違ったから知らないと思うけど私も弟も城西に通ってたんだよ」
「………」
「笑われるかもしれないけど、弟は本当に泳ぎがうまくてセンスもあって、きっと大きな夢を叶えられたと思うんだ」
私も含めて、家族全員がそう思ってた。
みんなで食い入るようにテレビ中継されている水泳の大会を見て。『ここのフォームが綺麗だ』とか『ここで沈みすぎたからタイムが』とかちょっとマニアックな意見も出し合って。
夏といえば水泳。夏といえばプールっていうぐらい、私も海斗もその話ばっかりしていた。
だから、それがなくなって。
まるで言っちゃいけない言葉みたいになって。
一番悲しんでいるのは海斗かもしれない。
「あの時、犠牲になったのがなんで弟だったんだろうって今でも思うよ。私のバカな行動のせいなのに。……私だったらよかったの。あの時、私が……」
それを言った瞬間、ずっと黙って聞いていた須賀が口を開いた。
「自分のせいで弟が死んだ?弟はお前を助けて死んだんだろ」
まるで大事なことを忘れるなって教えるかのように須賀は強い目だった。