私は部屋着から私服に着替えて外に出た。

時間にするとちょうど学校の下校時刻と同じくらいで、私の足は一歩ずつ学校に向かう。

校舎が見えてきた頃には随分と夕焼けも落ち着いてきて、部活動をしてる人たちはすでに帰宅してしまったようだ。


今さらだけど須賀は私を呼び出した理由はなんだろう。

それも聞かずに来てしまった私も私だけど。


水泳部がある建物に到着して、その扉を開けると須賀はプールサイドにいた。

「間宮、こっちこっち」

そう私を呼ぶ声はやたらと響いて、どうやらこの場所には須賀しかいないみたいだ。


「他の水泳部員は?」

「とっくに帰ったよ。今日の部活は昼で終わりだったから」


……ってことは、須賀はひとりで自主練習をしてたってこと?

ケガが完治したばっかりなのに急に元通りの練習量にして大丈夫なのかな。まあ、言ったところで須賀が聞き入れるわけがないけど。


「あのさ、タイム計ってくれない?」

これはデジャブというやつだろうか。

このシチュエーションに覚えがある。


「まさか、それで呼び出したわけじゃないよね?」

「それだけってわけじゃないけど、ついでに?だってなんか今すげータイムが出そうな気がするんだよね」

「………」

私の呆れ顔なんて無視してストップウォッチを手渡されてしまった。

距離はもちろん100メートル。

須賀は真ん中のスタート台に立って深呼吸する。そしてすぐ水泳選手の顔になった。