紗香と電話を切ったあと、私は再び机に向かって課題を進めていた。
気がつくと部屋から見える景色がオレンジ色になっていて、夏は日が沈むのが遅いから、やっと夕方かって感じ。
窓を開けると涼しい風がふわっと通りすぎて、セミたちも疲れたのかやけに今日は静かだった。
――カシャッ。
なんとなく夕焼けが美しくてカメラで1枚だけ撮った。
するとブーブーブーッと手の中にあるスマホが鳴る。……知らない番号。
『……はい』
おそるおそる電話に出ると『間宮?』となぜか疑問形。
べつに特徴がある声でもないのに、耳が聞き慣れてしまったのかすぐに電話の主がわかってしまった。
『なにか用?』
ほらね、すぐに意地っ張りな私が顔をだす。
『辻井から番号聞いてさ。本当に間宮に繋がるのかなって思ってかけてみた』
じゃあ、私じゃなかったら〝須賀〟はどうしてたんだろうか。そもそも紗香が嘘の番号なんて教えるわけがない。
『いま暇?』
『暇だからこうして電話に出てるんじゃないの』
『それもそうか』
いつもあまり活躍しないスマホが今日はやたらと出番がある。誰かから2回も着信があったのは久しぶりなんじゃないかな。
おかげで昨日充電しないで寝ちゃったから電池が28パーセントしかないよ。
『今から出てこれない?』
『……え?』
『水泳部に来てよ。待ってるから』
こんな時だけ柔らかい言い方をするなんてズルい。
上から目線で言われたら速攻で断ってやろうと思ったのに。