「間宮さんたちも来てたんだ」

〝も〟という言葉が気になったけれど私たちの注文の番になってしまい、とりあえず紗香と大判焼きをひとつずつ買った。


「山口はひとり?」

「ううん。友達と。混んでるから手分けして出店に並んでんの」

紗香と山口くんの会話を私は黙って聞いていた。

山口くんが注文した大判焼きは3つ。


「もしかして須賀も来てるの?」

紗香がふいにそんなことを聞くから私は大判焼きを落としそうになった。なんでそんなに動揺したのかは分からないけど。


「うん。俺と須賀とあとは他のクラスの男子」

山口くんがいる時点で予想はしていた。だって須賀と仲よしだし。そして「来た来た」と山口くんが手招きをする。その方向には須賀がいて目が合ってしまった。


「お、1週間ぶり」

その後ろには山口くんの言っていたとおり他クラスの男子がいて、顔はわかるけど名前は知らない。


「えー女子じゃん。名前は?名前」

グイグイと詰められる距離に私と紗香は後退り。

それを見た須賀は助けるように間に入って、代わりに自己紹介をしてくれた。


「右が辻井(つじい)で左が間宮」

須賀の近況は知らないけど、肩はどうなったんだろう。あれから丁度2週間だし、もう練習に復帰できたのかな。


「せっかくだから一緒に回らない?」

須賀の背中をぼんやり見ていると、そんな言葉が聞こえてきた。