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あの日、家族で毎年行っている川は納涼スポットとしても有名で私たちの他にも訪れてる人が何人もいた。


「すず、お皿とって」

「はーい」

持参したバーベキューセットを用意して、お父さんが美味しそうなお肉やウインナーを焼いていた。

その横でお母さんがテーブルに紙コップの飲み物を並べていて、お腹がずっと鳴っていた。


「あ、海斗!つまみ食いなんてズルい!」

「へへ」

車の中で散々お菓子を食べたのに海斗もどうやら腹ぺこのようだ。


「さっき石の間に魚が挟まってたから助けたんだ」

お肉が焼けるまでまだ時間がかかりそうだし、それまで海斗とバシャバシャと足で水のかけ合いをしていた。


「魚は助けなくても水の中なら死なないよ」

「でも可哀想じゃん」


海斗はすごく優しい。

この前も轢かれそうになったネコを助けたり、重そうな荷物を抱えたお年寄りに手を貸したり。

困っているものを見ると、放っておけない性格だ。


「お父さんたちもたまには川に入ればいいのにね」

お父さんとお母さんはいつも組み立て式のパラソルの下で涼みながらゆっくりとした時間を過ごす。


「バーベキュー終わったら泳ごうよ」

「泳ぐって姉ちゃん足が……」

「平気平気。ほら」

ケガをしている右足で思いっきり海斗に水をかけた。