☆拓也side★
痛そうに脇腹を押さえる男を、朦朧とした意識の中で見つめた。
結香ちゃんには………まだバレていない。
つーか………バレたくない。
俺は、結香ちゃんに気づかれないように、自分の腹を押さえた。
……………男の血と混じった、俺の血。
…………あぁ…………痛ぇ…………。
━━━━━━━━服を踏んで、滑ったとき………。
男が俺の上に、包丁と共に落ちてきた……。
━━━━━━━グチュッ………
その時、刺されたのは俺だった。
━━━………腹が熱い。
とっさに考えた。
このまま俺がくたばったら、こいつは結香ちゃんに手を出すだろう、と。
だから、無理やり男の体を持ち上げて、自分の腹から包丁を抜き、
刃先を逆にして脇腹を刺したのだ。
結香ちゃんがいる方とは逆の方でその作業を行ったので、
彼女にバレることはなかった。
…………バレたらさぁ……結香ちゃん、自分を責めちまうだろ?
━━━━━もう少しで救急車が来る。
もう少しだけ、保たねーと………。
…………やばい、血が、止まらない━━━。