「……………なんちゃって。」
「グフッ……………貴様ぁ…………」
━━━━━━━━━━……………え?
あたしは、もう一度、2人を見つめた。
始めに聞こえた“なんちゃって”………
拓也くんの声に聞こえたのは気のせいだろうか……………?
拓也くんと男の間には、隙間がない。
しかしその間から、赤い液体がドクドクと溢れている。
拓也くんは、男を自分の上から退かした。
うつ伏せだった男が、拓也くんの横に、仰向けになる。
……………あたしは、目を見開いた。
「大丈夫、刺したのは脇腹だ。死にはしない。」
男の血で染められた制服を気にしながら、
拓也くんが上半身を起きあがらせた。