どうしたんだと話の先をせかすと、ようやく続きを話し出した。



「宗、霧島さんと一緒に父の相談にのってくださったんですってね。 

あなたの提案が素晴らしかったって、父があなたのことばかり褒めるの。

先に話を切り出したのは櫻井さんだったのよ。 

霧島さんから条件の良いお話があったそうですねとおっしゃるものだから、 

近衛君のおかげで上手く運んでいますと言い出して、

それからずっとあなたのことばかり。

櫻井さんは不機嫌そうな顔になるし、私はそうですねとも言えないじゃない。 

困ったわ、食事どころじゃなかったんだから。

空腹をこらえていたら胃が痛み出して、ほとんど手付かずのまま」


「それが原因?」


「えぇ、そうよ。櫻井さん、私に何か聞きたそうだったから、

会食のあと早く帰らなくちゃと思って、迎えはいいですって断ったのに、

宗ったら私の話も全部聞かずに電話を切っちゃうんだもの」


「そこに俺があらわれた」


「あのタイミングで来るんだもの。また胃が痛くなったのよ」


「ストレスだったのか……体調の悪さは、本当にほかの理由じゃないんだな」



思いつめた私の顔に尋常でないものを感じたのか、珠貴の顔がかわり、

えっ……と絶句した。



「宗、勘違いしていた。そうでしょう」


「いや、あの……」


「体調が悪いのは、つわりのせいだと思ってた。そうじゃない?」


「……うん……違ったんだ」


「やっぱり……違います。どうしてそんな風に思ったのかしら? 聞かせて」 



違うといわれホッとすると同時に、勝手に思い込んでいたのはなぜかと

聞かれ、恥ずかしさが広がってきた。



「平岡が」


「平岡さんが?」


「蒔絵さんが君を心配してると聞いて」


「それで?」


「シャンタンの食事で辛そうな顔をしただろう。刺激物を受け付けないって。

それを平岡にはなしたら、もしかして、そうじゃないか、

洗面所に駆け込むのってよくあるだろうって」


「宗もそれを信じたのね」


「あまりにも君の健康状態と符合するから。

それに、何度も体調が悪いと言ってたじゃないか。 

平岡の言うとおりだと思うと心配でたまらなかった。

それなのに、君は何も言ってくれない。

だけど、もしそうなら大事な時期だ。

体に負担はかかってないか、無理なことはしないでほしいと思うのに、

車の男に食って掛かったり、櫻井にも……君を見ながらハラハラし通しだった。

心配するないうほうが無理だ」



まるで珠貴を責めるように、一気に言葉を連ねた。

ふぅ……と、ためいきとも返事ともつかない声がして、座りましょうとソファ

へと私をうながし横に彼女も腰を下ろした。