地下駐車場からエレベーターで部屋へと向かう。

無言の私に気まずい顔をしていた珠貴が、部屋に入ったとたん表情を変えた。



「あら、いい香り。もしかして、お食事がまだ……」


「途中だった。ほとんど食べたあとだよ。君は済んだんだろう?」


「一応ね。でも食欲がなくて、あまり食べてないの」


「まだ体調が悪いのか」



やはりそうなのか。

もしかしての強い思いがこみ上げて、これ以上待てなくなった。



「珠貴、体調が悪い理由はなんだ。

この前だってそうだ、食べられなくてほとんど残した。

君の体が心配でならないんだ」


「理由と言われても……体が受け付けないの。そんなことってあるでしょう?

シャンタンのときは、あなたのことがあったから…… 

マスコミに追いかけられていると聞いて、ずいぶん心配したのよ。 

それに真琴さんの噂も少し気になっていたの。

うぅん、少しじゃない、すごく気になってた。

沢渡さんも心配してくださって、ストレスからくる体調不良だから、

食事も無理はしないようにって」


「……俺のせいだな」


「うーん、違うとは言えないわね。

今夜の食欲不振も、あなたが原因だったのよ」


「今夜? どうして」


「急な接待だと言うから父についていったら、

実は櫻井さんと彼のお父様との会食だったの。

不意打ちですから、私にとって楽しい席ではなかったわ。 

それがね……ふふっ」



何かを思い出したのか、話の腰を折るように笑い出し、ひとりで笑いを楽しん

でいる。