北乃川高校の終わらないイジメは有名だ。いつも誰かがいじめられる。
でも、ターゲットは半年も経たないうちに次へ次へと移って行く。
だから、皆イジメの事は見て見ぬ振りをしているし、教師も知らない振りを続けている。
でも、そのイジメは決して生易しいものではない。集団リンチ、椅子の画鋲、無視、ゴミ扱い、死ねっていうラクガキ、トイレの水かけられる…
過去には車で轢こうとしたとか、
2階の教室のベランダから落とそうとしたとか、…
タバコを首に押し付けられたりも。
幼稚園児のイタズラみたいなものから壮絶なものまでイロイロだけど、
どんなに酷いイジメがあっても、自殺者や死者はでていない。
学校の七不思議に数えられてもいいくらいだ、
と転校してきてまだ1ヶ月の亜美は思う。
この話を教えてくれたのは、転校してきて1番最初に話した桃佳だった。
最初聞いたときは、素直に怖いと思ったけれど、
今は怖いという感情よりも死者がいない事実の方が不思議でならない。
今イジメられてる子も、生きてるし、不登校になったり、先生や親に言って騒いだりしていない。
そんなもんなのかな、なんて思ったりもするけど、この学校の何かおかしいって思ったりする。
まぁ仮に何かが普通じゃなかったとしても、
それが何なのか知る術もないし、知ってどうすることもできない。
それにその何かがあるのかすら分からない。
ただ、一つ思うこと。
やっぱり、何か変だ。
4月27日。明日から連休で、みんなテンションが高い。
買い物するとか、ハワイ行くとか、とにかく寝るとか、そんな話で盛り上がってる。
HRで、連休の宿題の一覧表が配られる。
作文、ワーク73ページまで、教科書何ページまで予習、数学プリント7枚…
(夏休みか…?!?!)
「はぁ?!何これ、ぜってーあそべねーじゃん!!」
「ふざけんなよ俺サッカーで忙しんに」
「旅行先に宿題とかもってきたくないわー」
皆の文句が止まらない。
「連休明けに提出なー。確認テストあるからしっかりやっとけよー。あっ、ちなみに平均いかねぇ奴追試あるからな!はいっ!!おわりー♪」
担任の小暮先生はいつもこんな感じ。ほんとに軽〜い。
ほとんど怒らないからっていう軽い理由で生徒には割と好かれてて、こぐたん とかカワイイあだ名がつけられてる。
ストレートにカツラとか言われてる教師もいるし、それに比べれば全然いい方だろう。
放課後。
「ねえ亜美ー!!宿題手分けしない?」
桃佳と愛美と美優。私のめっちゃ仲いい友達。
「おっけー!!誰がどれやんの?」
「うーん…じゃあ、クジね、今作るから♪」
美優がルーズリーフを切ってクジを作る。
「じゃあ、どれがいい?せーので引くよー!!」
「せーの!!!」
私は数学。どちらかというと得意な教科だから、まぁいっか。
「じゃあ、4日に写すってことで!5日は遊びいこーっ」
「りょーかい!どこでやんの?」
「美優んちきていいよー、その日親いないしー」
「おっけー♪早くあそびたいわぁ」
生徒って結構ずる賢い。マジメに宿題やるのは委員長くらいだろう。
「やっば!!電車きちゃう!桃佳いこーっ」
「ほんとだ!ばいばーいっ」
亜美は桃佳と同じ電車。いつも一緒に帰っている。
桃佳は亜美より2個前でおりちゃうんだけどね。
「数学早くおわさなきゃ…」
明日からはゆっくりしたり、中学の時の友達と買い物いったり、予定がいっぱい。
電車を降りると、家じゃテレビとか見ちゃうから、と近くの図書館へ向かった。