私が彼を知ったのは、ちょうど二年前くらいだった。
彼は、さらさらでしかもきらきら光る茶色の髪を揺らしながら、バスケ部に入部してきた。
「今日から入部しました、高木真也です!よろしくお願いします!」
彼がなにかを言うたびに、周りからの歓声で体育館が揺れる。流石はイケメンだ。
でも、部長も認めた存在だ。凡人マネージャーな私では到底関わることのない人。
話すことだって義務的なことしかないだろうと思ってた、んだけど初対面の3日後、私の人生が変わる出来事が起こった。
「えと、そこの君、マネージャーちゃんだよね?タル、落としたッスよ?」
「っえ?」
部活の途中の休憩で、ばたばたとタオルを右から左へ運んでいたときに、不意討ちで肩に手を置かれた。
いきなりすぎて、げほっと咳き込む。
顔を上げると、髪と同じ色をした彼の目が私を捉えていた。
「タオル…?あ、」
手元に持っていたのが落ちてしまったようだ。
「落ちちゃったんスか?はい、」
「あ、ありがとう」
彼はタオルのほうに目を向けると、また私の目を見つめた。
じり、と後ろに下がると靴が鳴る。
「…君、名前なんて言うんスか?」
「わ、私は名乗るようなものじゃないのでっ…」
平凡な私が関わって良い人では無いのだ。脳内でそう警告がなる。
じわり、と滲む汗が冷えだした頃。私はもう逃げる体勢に入っていた。
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「ああ!ちょっと!」
高木くんの声を後目に早く、早くと人混みの中へと上手く隠れた。