「今日のホームルームは、もうすぐ始まる学園祭について話し合います。」

ザワ…

朝の重い空気が学園祭というフレーズで
一気に明るくなる。
ざわついている教室を先生が静かにっと一括する。

「えー…私たちの学校の市原学園は姉妹校である宮原学園と合同で学園祭を行います。」

姉妹校と合同…

“ センパイが首にかけてた名札ってうちの学校と姉妹校のやつだったよ。 “

えっ!?それってもしかして…

「そこで今日は実行委員を決めたいんだけど…」
「実行委員ってどんなことするんですかー?」
「そぉね…主に運営の補助とか外部からのお客さんの対応とか。あぁそうそう。オープンキャンパスに来る高校生のお世話っていうのもあったかな。」

ザワ…

先生の言葉に再び教室がざわつく。

「あゆなっ!!実行委員一緒にしよーよ。」
「なんで?」
「さっき言ったじゃん。センパイ、姉妹校の生徒だって。」
「だからってなんで実行委員…」
「実行委員って、向こうの校舎にも行ったりするだろうし。それってセンパイに会える確率が上がるってことじゃん?」
「それはそうかもだけど…」
「じゃ決まりっ先生ーっ!!私と北村さんがしまーすっ」
「ちょ、こらっ!!」

ゆりなは私の制止をふりきり
実行委員に立候補してしまった。

「あら、そう?じゃあお願いしよーかな。」
「はぁい。」
「私、まだ一言もやるなんて…」
「では、実行委員は2人に決定っ!!」

パチパチパチパチ…

「はぁー…何でこんな事に…」

ーーーーー
「あーもぅっ!!私、実行委員なんてやったことないのに。」
「大丈夫だって。センパイたちもフォローしてくれるって言ってたし。」

休み時間。
私はうっぷんを一気に3人に吐き出す。

「けど、珍しいね。2人が立候補するなんて。」
「私は立候補してないっ!!ゆりなが勝手に…」

朋子の言葉を思いっきり否定する。

「ゆりなも何で実行委員しようと思ったの?ゆりな、面倒くさそうなの嫌いそうなのに。」
「千秋さん。私だってやるときはやりますよ。」
「どうせ、イケメン探しでもするつもりでしょー?宮原ってイケメン揃いで有名だし。」
「え、そうなのっ!?」

朋子の言葉に目を輝かせたのは
グループの中で一番イケメンというフレーズに敏感なゆりな。

「え、イケメンあさりじゃないの?」

イケメンあさりって…
千秋…

「あんた、藤本くんはどうしたのよ。昨日、あんだけはしゃいでたのに。」
「それはそれよ。」
「あのねー…」

呆れる私をよそにゆりなは鼻歌を歌っていた。

「って。私の話は置いといて。今はあゆなの問題だって。」

ピンポンパンポーン

《学園祭の実行委員は本日の4限終了後、宮原学園に集合してください。もう一度繰り返し…》

話題の中心が私に戻ろうとしたとき
めったにならない校内放送が教室に鳴り響いた。

と同時に
ゆりなの目が輝く。

「初日からセンパイに会えるチャーンスっ」
「ゆりな、楽しそうー。」
「…あれ?今、センパイって…目的はイケメンじゃないの?センパイって何のこと?」
「ふふふ…千秋、よくぞ聞いてくれました。今回の真の目的は…あゆなの…」
「だぁーっ!!」
「んーっ!!」
「あんたは余計な事をペラペラと…」
「このクラスの実行委員って誰ー?」

ゆりなの口を抑え文句を言っていると
ドアの所に藤本くんの姿が見えた。

「ゆりなと私だよーっ」

藤本くんの問いかけにその場で応える。

「あ、北村さん。良かった。話した事ある子で。」
「どうかしたの?」
「俺も実行委員なんだけど良かったら一緒に行かないかなーと思って。」
「うん、全然いいよー。」
「サンキュー…てか、そろそろ手離したがよくない?」
「え?」

藤本くんが指さした先には
心なしか顔が紫に変色しているゆりながいた。

「あぁっ!!ゴメン、ゆりなっ」
「っあー…苦しかったー…」
「ゴメン、大丈夫?」
「相変わらずの仲良しコンビだな。」
「えへへー…」
「あ。橋本さん、昨日はありがとう。」
「…っ。」
「じゃあ放課後よろしくな。」
「うん、後でねーっ」

パシっ

藤本くんに手をふっていると
後ろから頭を叩かれる。

「いったー…なにすんのよー。」
「それはこっちのセリフだっての。ホントに死ぬかと思ったし…」
「ゴメンって。まさか、鼻まで押さえてるとは思わなくて。」
「ワザとだったら殺意感じるわ。」
「だからーゴメンってば。」
「まぁいいけどねーっ藤本くんと一緒だし。」

単純…

「てゆーか。ゆりなたちいつの間に藤本くんと仲良くなってたの?」
「しかもゆりな、お礼まで言われてたし。姫様の寝坊の訳はそれだったりして?」
「え?千秋、姫って何のこと?」
「何でもなぁい。こっちの話。ね、朋子、あゆな?」
「「ねーっ」」
「なーんのことー?ねーってばーっ」 

専門学校に入学して初めての行事。
なんだか、大変なことになりそうな予感がするのは
私だけでしょうか。